ロボットにおける感情の役割と磁気の世紀の到来

理論物理学者でBBCやディスカバリーチャンネルなどの科学番組の司会も努めたカク・ミチオ著「2100年の科学ライフ(2011)」を読みました。

様々な分野の(当時の)最先端の科学技術と延長線上の未来について語っている情熱的な本で、300人以上の科学者のインタビューに基づいているとのことでした。

個人的に気になった所を抜粋します。

 ムーアの法則の終焉 

ムーアの法則は集積回路上のトランジスタ数は「2年ごとに倍になる」というものであるが、どの様に終わるを告げるのか、そして何がそれに取って代わるのかは、物理学の諸法則に左右される。2020年ごろかその後まもなくには、ムーアの法則は次第に成り立たなくなる。

紫外線の波長は最短で10nmほどなので、エッチングできる最小のトランジスタは原資30個ぶんほどのサイズになる。最終的に個々の原子のサイズにトランジスタがなった際、トランジスタは小さくなりすぎて、量子論や原子物理学が幅を利かせるようになり、電子が配線から漏れ出してしまって回路をショートさせる。

厚さ原子1個分、幅が原子10個分のトランジスタ(2008)

https://www.wired.com/2008/04/scientists-buil/

 MRIの小型化 

fMRIは何らかの思考にかかわる正確な脳の部位を突き止める、ある種の読心術とも言える分野だ。将来MRIは病院に現在あるような、重さが数トンもあって一部屋まるごと占領してしまう巨大な装置でなくても良くなるだろう。携帯電話ぐらい、いや硬貨ぐらいまで、小さくなるかも知れない。

1993年、ベルンハルト・ブリュミッヒらが、ドイツのマインツにあるマックス・プランク高分子研究所で、小型MRIマシンが作れる斬新なイデアを思いついた。彼らが開発したMRI-MOUSEという新しいマシンは、現時点で高さ30cmほどだが、いつかはコーヒーカップほどのサイズになってデパートで売られるようになるかも知れない。このマシンの要は、不均一な磁場だ。一般に、今日のMRIマシンがばかでかいのは、きわめて均一な磁場の中に身体を置く必要があるためだ。不均一な磁場を使うと、得られる画像は歪んで使い物にならなくなるが、ブリュミッヒは、この歪みを保証する巧みな手立てを発見した。複数のパルス状電波を対象に当て、その結果生じるエコーを検出するのである、これからコンピューターを使ってエコーを分析し、不均一な磁場が作り出した歪みを補正するわけだ。

手のひらサイズのNMR-MOUSE(2021)

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1090780720301701

 感情の役割(と人工知能) 

われわれの感情はどれも(嫌悪、妬み、恐怖、愛など)、敵意に満ちた世界の危険からおのれを守り、繁殖を助けるように、数百万年かけて進化してきた。どの感情も、われわれの遺伝子を次の世代に伝えるのに役立っているのである。

感情の主な目的のひとつは、われわれに価値観などを与え、何が重要で、何が高価で、何がかわいくて、何が貴重なのかを決められるようにすることなのだ。感情がなければ、全てが同じ価値になり、無数の決断がどれも同じ重みで身動きが取れなくなってしまう。したがって、科学者は現在、感情が贅沢な存在であるどころか、知能に欠かせないものである事実を理解しだしている。進化の道筋を考えれば、感情は自律的なロボットを作り出すのに欠かせない役割を担っていることになる。

ブームと共に去る感情のないヒト型ロボットPapperくん (2018)

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00466/101000001/

 (記憶力の強化と)忘れることの重要性 

記憶と学習能力を向上させたスマートマウスにはNR2B(NMDA型グルタミン酸受容体サブユニット)を1つ余分に持つ「ドギー」を含め現在およそ33の系統が存在するが、記憶の強化には良きせぬ副作用が伴う。スマートマウスは、ときに恐怖で身がすくんでしまうのである。ごく弱い電気ショックを与えただけでも、恐怖のあまり身を震わせる。「記憶力が良すぎるようです」と語るのは、自分でもスマートマウスの系統を作り出したUCLAのアルシノ・シルヴァだ。科学者は現在、この世界を理解し、知識を整理するには、覚えるのと同じぐらい忘れることが重要なようだと気づいている。ファイルをたくさん捨てなければ、知識の整理はできないのかも知れない。

遺伝子工学で誕生した記憶が強化された「NR2Bスマートマウス」(2007)

https://www.bu.edu/articles/2007/mighty-mice-stay-smarter-longer/

 磁気の時代の到来 

前世紀は電気の時代だった。だが今世紀には、物理学者が常温超伝導体という聖杯を手に入れそうだ。そうなれば、磁気の時代という全く新しい時代が到来するだろう。常温超電導は、他にエネルギーを投入しなくても、列車や自動車を地面から浮遊させられる超電導磁石を生み出せるだろう。エネルギーの大半は摩擦に打ち勝つために消費されているので、磁気の時代が来たら、エネルギー消費と二酸化炭素排出量を恒久的に減らすことができるはずだ。

これまでのところ、新種のセラミック超伝導体で、超電導を示す温度の世界記録は-135℃だ。これは大きな意味をもっている。液体窒素(牛乳と変わらないほど安い)は-196℃ででき、このセラミックを冷やすのに使えるからである。しかし、このセラミックの量子論的現象は複雑過ぎ、現時点では解明できていないから、なぜこれが超伝導体になるのかわからない。手がかりすら無いのである。この超伝導体の説明をつけられる先進的な人には、ノーベル賞が待っている。

超電伝導体(のマイスナー効果)により宙に浮かぶ磁石

https://japanese.engadget.com/first-room-temperature-superconductor-043045282.html

われわれは今、エキサイティングな時代に生きている。科学やテクノロジーのおかげで、かつては夢見ることしか出来なかった世界が目の前に開けつつある。科学の未来を、その課題も危険も全て含めて眺めると、真の希望が見えてくる。われわれは自然について、今後何十年のうちに、これまでの人類史全体よりも多くの発見をするだろうーーーー何倍もの発見を。

 Tochiの勝手な感想 

これまでもそうであったものの、未来では更に科学やテクノロジーが進化し、国の発展を支える基盤になりそうです。紹介される様々な先端技術にワクワクすると同時に、登場するのが欧米や中国、インドの研究の話ばかりで日本の将来にやや不安を覚えました。カクさん曰く、

“西洋には「軋(きし)る車輪には油が差される」(騒ぐほど注目されるという意味)という言い回しがある。一方で、東洋では「出る杭は打たれる」という。このふたつの表現は正反対だが、西洋と東洋の思想の本質をいくらか捉えている。”

とのこと。これが西洋に比べて創造的な作業に関して東洋が数十年遅れたままの要因の一端だと考えているようです。とは言え、ロボット分野では日本は先行しているという話も聞きますし、介護や育児や家事などのロボット分野でもし日本が世界を牽引できるようになれば、人口減少による労働力不足といった国内問題を解消すると共に、バブル以降停滞し続けている日本経済の起爆剤になり得るかも知れません。

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https://www.change-makers.jp/technology/11201

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