理屈なき、コ◯ナ脳の群衆心理

 「敗者のゲーム」で有名なチャールズ・エリスさんの推薦図書、フランスの社会心理学者ギュスターヴ・ル・ボンさんの「群衆心理(1993、原著は1895)」を読みました。

フランス革命や暴動を起こすような群衆の熱狂、今で言うところのコ◯ナ脳のような集団ヒステリーが、なぜ生じ、どの様な特徴があるのかを考察した本でした。

かなり古い本なので、言い回しがやけに大げさだったり抽象的で読みづらい所も多いですが、現代にも十分に通じる内容だと感じさせられました。

例によって、個人的に気になったところだけまとめます。

 

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 群衆心理の一般的特徴 

意識的個性の消滅、無意識的個性の優勢、暗示と感染とによる感情や観念の同一方向への転換、 暗示された観念をただちに行為に移そうとする傾向、これらが、群衆中の個人の主要な特性である。群衆中の個人は、もはや彼自身ではなく、自分の意志をもって自分を導く力のなくなった一箇の自動人形となる。
それだから、人間は群衆の一員となるという事実だけで、文明の段階を幾つもくだってしまうのである。それは、孤立していたときには、恐らく教養のある人であったろうが、群衆に加わると、本能的な人間、従って野蛮人と化してしまうのだ。原始人のような、自然さと激しさと凶暴さを具え、また熱狂的な行動や英雄的な行動に出る。言葉や心象によって動かされやすく、自身の極めて明白な利益をもそこなう行為に煽動されやすい点からも、さらにいっそう原始人に近いのである。群衆中の個人とは、あたかも風のまにまに吹きまくられる砂粒のなかの一粒のようなものだ。

 

 群衆中の個人が単独の個人と相違する理由 

この原因を見極めようとするには、まず近代の心理学にはつきものの、次のような観察を思い起こさねばな らない。すなわち、単に有機体の生活においてのみならず、知能の作用においても、無意識現象が有力な役割を演じている、ということである。精神の意識的生活は、その無意識的生活にくらべれば、極めて微弱な役目をつとめているにすぎない。最も明敏な分析家、最も炯眼な観察家でも、自分の行為を導く無意識的動機は極めてわずかしか発見することができない。われわれの意識的行為は、特に遺伝の影響によって形づくられた無意識の基盤から起こるのである。この基盤は、種族の精神を構成する無数の遺伝物を含んでいる。われわれの意思決定行為の明らかな原因の背後には、われわれの知らない原因がひそんでいる。われわれの日常行為の大部分は、われわれも気づかない、隠れた動機の結果なのである

 

 群衆の人数 

正確に物を見る働きが失われ、かつ現実の事象が、それと関係のない錯覚にとってかわられるためには、群衆は多人数であることを要しない。数人の個人が集れば、群衆を構成する。そして、その個人が優秀な学者である場合でも、その専門外の事柄になると、群衆のあらゆる性質をおびるのである。各自の有する観察力と批判精神とが消えうせてしまうのである。

 

 群衆の観察 

群衆によって行われる観察に立ちかえれば、次のように結論されるであろう。すなわち、集団の観察は、あらゆる観察のうちで最も誤っており、かつ多くは単に、感染によって、他の者に暗示を与えた一個人の錯覚にすぎないのである、と。

 

 群衆の原動力 

人間の統治に道理が参加することをあまり要求しては ならない。名誉心、自己犠牲、宗教的信仰、功名心、祖国愛のような感情は、道理によらず、むしろしばしば 道理に反して生れたのであって、これらの感情こそ、これまであらゆる文明の大原動力であったのである。

 

 Tochiの勝手な感想 

インデックス投資派の大御所であるチャールズ・エリスさんの推薦図書ということで、もしかすると、株のバブル形成や暴落と言った、ある種のヒステリー状態をこの群集心理と重ね合わせたのかも知れません。

 

常日頃、私達は理性で考え、行動していると思いがちですが、実際には本能に突き動かされているだけの場合がほとんどです。プロスペクト理論で有名なダニエル・カーネマンさんが、著書 「ファスト&スロー」の中でファストと命名した、素早く自動的で、かつ無意識の判断がこれに当たります。

この無意識を突き、指導者がイメージの「断言、反復」による暗示を群衆に「感染」し、群集心理という熱狂的な集団洗脳状態が形成されます。この状態の群衆は、偏狭で横暴で保守的であり、反論や道理を全く受け付けなくなるとのこと・・。

 

ここで言う指導者こそ、どうやら現在はテレビに取って代わっている様ですが、科学や経済的合理性を全く無視し、ひたすら恐怖による過剰反応をし続けているだけの状態を見るにつけ、コ◯ナ脳の群衆心理を非常に良く言い表している様に感じました。

即ち、真に感染しているのはウ◯ルスではなく、テレビによる恐怖の暗示の方だと言えそうですね 😩 う~んざり!

コメント

  1. deds より:

    日本で欧米のように暴動などが起こってないということはマスコミの煽動も効いてないということではないのか?

    • Tochi より:

      対策に抗議する暴動が起こっていないということは、むしろ煽りが有効に機能していることを示しているのでは。
      ちなみに、日本におけるテレビ・新聞といったメディアへの信頼度は、欧米のそれよりもかなり高いです(実際に信頼に値するという意味ではない)。
      今回のことで、これらのメディアへの信頼が大きく損なわれれば、それがメディアが犯した罪の代償といえるの・・かなー。個人商店を散々潰しておいて、その程度じゃ全く足りない気がするけど。

      • deds より:

        普通は暴動などが起こるときのことを問題視して群集心理というんだが、逆の意味で使っているのか?

        • Tochi より:

          普通がどうなのか知りませんが、少なくともこの本で言っている群衆心理は、そういった犯罪的なことだけではなく、より広い集団心理に関するものでしたよ。スエズ運河を作ったことが例に挙げられていたくらいです。
          ちなみに、あえて「群集」ではなく、「群衆」と表記しているそうなので、もしかするとその辺りが普通と違う使い方なのかも知れません。

  2. deds より:

    集団でおとなしくだまされつづけるような、ゆでがえる状態などにも使ってるわけだ。
    すべて国の国民は○○主義や××教の群集心理状態なのかもしれんなあ

    • Tochi より:

      >すべて国の国民は○○主義や××教の群集心理状態なのかもしれんなあ
      「意識的個性の消滅、無意識的個性の優勢、暗示と感染とによる感情や観念の同一方向への転換、 暗示された観念をただちに行為に移そうとする傾向、これらが、群衆中の個人の主要な特性である。」
      この「暗示された観念をただちに行為に移そうとする傾向」が、時には暴力や犯罪であったり、今回であればマスクやお注射なのでは。科学や経済的合理性の議論を完全に排除している点はそれ以外の特性にピッタリ当てはまっていますので。

      ちな、言葉の定義云々とは異なるのでしょうが、個人的には「すべて国の国民は○○主義や××教の群集心理状態」はある意味その通りだと思いますけどね。正解を繰り返し暗記し続けさせる義務教育なんて、洗脳そのものですから。普通とかいう概念自体がまずもって怪しいなぁ
      サラリーマン(という奴隷状態)が普通。これ、本当に普通ですかね