配当狙いは【損】なのになぜ魅力的なのか? 確率の罠

配当は魅力的です。

高配当株や債権に投資して配当生活がしたいと誰しも一度は考えたことがあるのではないでしょうか?

 

とは言え実際に検討してみると配当重視の投資戦略は成長重視と比べると殆どの時期では分が悪いことがわかります。例えば過去49年のS&P500では配当が平均3%程度、株価成長が平均7%程度なので実に2倍以上もの溝を空けられています。

投資の期待値:アーリーリタイアに適した投資法

 

素人考えでもこの様な傾向はまあまあ当然に思えます。配当利回りが高いということは成長への投資よりも株主還元へと切り替えた企業や分野であり、そうでない競争相手からは当然遅れを取る可能性が高くなると考えられます。また配当は株価における比率で見るため、成長する企業ではなく横ばいかむしろ低迷している不人気な企業の方が高利回りになり易いという特徴があるためです。

それでもなぜか配当への魅力は薄れません。なぜなのでしょうか?

 

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 リタイアにおける意義? 

リタイアすると給与収入が無くなるため、もちろん配当による現金収入があれば非常に有り難い所です。

実際「FIRE 最強の早期リタイア術」で有名なクリスティー・シェンさんも半分を債権に投資し、一部を高配当株に投資することで生活費として必要な現金比率を減らしています。

 

しかしそのせいで年間に4%しかリターンが望めず、結果として生活費の25倍の100万ドル(1億円以上)もの元手が必要になるというTochiとしては摩訶不可思議なFIRE戦略を採っています。

これ、素直にS&P500にしておけば税引き後でも8%くらいのリターンが望める計算になるので、仮に生活費の現金ストックを10万ドル余計に残したところで60万ドルの元手で済むはずです。それが、配当にこだわったがために100万ドルもの資金が必要になってしまったことになります。

シャープ・レシオ(リスク・リターン比)を重んじた結果でもあるということなので、もしかすると精神衛生上はこの方がいいのかも知れませんが、60万ドルで出来ることに100万ドルもの資金を投じることに本当に経済的合理性があると言えるのでしょうか?

 

 確実性の罠 

突然ですが、ここで問題です。

 

次の4例では、100万ドルがもらえる確率が5%ずつ上がっていきますが、あなたはどれも同じ様にうれしく感じるでしょうか?

 

A:0%から5%に上がる。

B: 5%から10%に上がる。

C :60%から65%に上がる。

D :95%から100%に上がる。

 

期待値の法則によれば、100万ドル受け取る確率が5%上がるごとに効用も同じだけ上がるはずですが、あなたの実感と一致するでしょうか。

もちろん、しないはずです。

 

0%→5%は大きなインパクトを持ち、実際には殆ど起こりそうもない結果に不相応に大きな重みが付けられます(可能性の効果)。一方で5%→10%は期待値が倍になりますが、嬉しさは倍になりません。

また、95%→100%への変化もまた大きなインパクトがあります。「確実」と「ほぼ確実」は全く違うものであり、ほぼ確実な結果に対しては期待値に見合う実感が感じられません(確実性の効果)。

 

この様に、意思決定に際して人々が確率に割り当てる重み、すなわち決定加重は発生確率とは一致しないことが知られています。掛け金の小さなギャンブルに対する振る舞いから計測された決定加重の平均値は以下の様になります。

 

 

確率と決定加重

参照:ダニエル・カーネマン著 「ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?」

 

非常に少ない確率を過大評価(1%を5.5と判断)し、非常に高い確率を過小評価(98%を87.1と判断)する傾向が見られることがわかります。100%からたった2%確率が下がっただけで重みは100から87.1と13%も急減します。そして中間の確率に対する感応度は必然的にひどく低くなります(50%を42.1と判断)。

 

この様に私達の判断はしばしば経済的合理性を無視し、高い確率を低く評価し、確実であることのみに強い魅力を感じます。

 

 確実な配当の罠 

これが中間的な確率で上昇する株価よりも、確実に貰える配当に強い魅力を感じる要因の一つだと考えられます。

 

逆に低い確率を過大評価する点に着目すれば、例えば保険が魅力的に感じる原因になっていることがわかります。また、コ○ナの致死率やワ○チンの副反応などにも同様の現象が見られますが、これらの場合はリスクを過大評価する傾向が加わることでより顕著な過大評価が生じます(プロスペクト理論)。

なぜ「コツコツドカン」で負けるのか? プロスペクト理論による謎解きと対策

 

いずれも経済的合理性から外れた認知のゆがみによるものですが、安心感を買っているという意味では精神的合理性は満たされていると言えます。とは言え、少なくとも株の場合は株価の要素の方が重要であることが多いので、配当ばかりに気を取られていると足元をすくわれかねません。

 

そんな時は、「何のためにリスクを取ってまで投資をしているのか?儲けたいからか、それとも、安心したいからか)と自身に問い直すことで投資の邪魔をする認知のゆがみと上手く付き合っていくことが出来る・・かも知れません 😍 っぱ配当最高! ← 失敗ケース

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