村一番の貧乏家族の出世 (17/5/22)

小さい頃、はむ子のお仕事はヤギのお世話でした。毎朝ヤギに餌を上げて乳を絞ってから学校に行き、帰るとまたヤギのお世話をしました。はむ子が行くと「メェ~、メェ~」と甘えるヤギでした。

 
ある日、帰るとヤギが居なくなっていました。お母さんに聞いても何も答えてはくれません。迷子になった訳でもありません。売られてしまったんです。お父さんは宮大工でしたが、戦争に行って体を壊してからと言うもの、はむ子の家はとても貧乏でした。だから何かお金が必要になると飼っていたヤギを売ってお金を作るしかありませんでした。はむ子は悲しくなって一晩中泣き明かしました。20150525_105809.jpg
 
うちにはそんなにお金がないのかと心配になったはむ子はある日、お母さんがいない時に天井からぶら下がっているお財布の中身をコッソリと明けて見てみました。すると中には殆どお金が入っていませんでした。あ~、うちは本当にお金がないんだ、と小さいながらにとてもショックを受けました。4c6f9c352ab1d238cb12cf2a9bd5b291_m.jpg
 
それでも、畑があったので食べ物には困らなかっただけまだマジでした。貧乏で畑もない家の子はお昼休みになるとこっそりと外に出て行きます。みんなと一緒に食べられるお弁当を持っていないからです。午後の授業が始まると「ぐ~」とお腹が鳴る音が聞こえます。そんな時代でした。
 
村一番の貧乏家族。それでも村で誰も行っていない大学に4人姉妹全員が行かせてもらいました。お父さんは昔、今で言う大学に行きたかったのですが家が貧乏だったために行けませんでした。合格しても行けないことを承知しながら、それでもテストだけ受けさせて貰ったそうです。だから子供たちだけは絶対行かせたいと思ったそうです。でもお金はありません。お父さんは頭を下げて村中から借金をして娘達を大学に通わせました。
 
娘達は大学を卒業すると小学校の教師になり、ほうぼうに嫁いでいきました。村一番の貧乏で借金まみれになりながらも娘を出世させたお父さんはその後、村役場の仕事を任されるようになり、借金も返すことが出来ました。困った村人にお金を貸すことも出来ました。
 
file2231252094767.jpg夏休みになると孫が大勢集まります。はむ子のお父さんはおじいちゃんになり、ニコニコしながら子供たちを眺めます。この時を一年中楽しみにしています。
 
 
今は亡き母と祖父の思い出話し。

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