意識の存在理由と自由意志の非存在

認知行動学研究室を主催する神経科学者、デイヴィッド・イーグルマン著「意識は傍観者である 脳の知られざる営み(2011)」を読んでみました。

タイトルに惹かれたのですが、一番面白かったのは中身ではなくタイトルであったというややがっかりな本でしたが、個人的に気になったところをまとめてみます。

 

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 本能を意識できない理由 

私たちが得てして本能の存在に気付かないのは、それが非常にうまく機能していて、苦もなく自動的に情報処理しているからだ。ひよこ雌雄鑑定士や対空監視員の認識(意識できる顕在記憶ではなく無意識の潜在記憶で学習していることが知られている)のソフトウェアと同じように、プログラムは回路の奥深くに焼き付けられているので、私たちにはアクセスできなくなっている。これらの本能がまとまって人間性と考えられているものを形成している。

ここで重要なのは、特化して最適化された本能の回路は、スピードとエネルギー効率のメリット全てをもたらすが、その代償としてスピードの遅い意識のアクセス範囲からはさらに遠ざかることだ。その結果、私たちはテニスのサーブにアクセスできないのと同じぐらい、生来の認知プログラムにアクセスできない。この状況は心理学者のコスミデスとトゥービーが「本能失認」というものに繋がる。すなわち、私たちは自分の行動のまさに原動力である本能を見ることができない。これらのプログラムにアクセスできないのは、それが重要でないからではなく、極めて重要だからである。意識が干渉しても何も良くならない。

 

 人工知能が行き詰まった理由 

なぜ、人工知能は行き詰ったのだろう?答えは明快、知能は恐ろしく難しい問題であることが判明したのだ。テクノロジーは今のところ、民主主義アーキテクチャ、 すなわちライバルからなるチームの枠組みの考えを活用していない。あなたのコンピューターは何千という特化したパーツから作られているが、決して協調したり議論したりしない。対立に基づく民主的な組織化、要するにライバルからなるチームのアーキテクチャは、生物学に着想を得たマシンが活躍する実り多い新時代の到来を告げるのではないだろうか。

 

 意識の存在理由 

大抵の神経科学者は動物の行動モデルを研究する。ウミウシは触れられるとどういう風に引っ込むか、マウスは報酬にどう反応するか、フクロウは暗闇でどうやって音の出所を突き止めるのか。このような回路が脚光を浴びると、すべてがゾンビ・システム(特定のインプットに対して適切なアウトプットで反応する回路設計図)に他ならないことが明らかになる。私達の脳がこのようなパターンの回路だけで構成されているとしたら、なぜ、生きていて意識があるもののように感じるのだろう?

神経科学者のクリックとコッホの答えによると、意識は自動化されたゾンビ・システムを制御するために存在する。ある程度複雑なレベルに達している自動化されたサブルーチンのシステムは、パーツが通信を行い、資源を分配し、制御を割り当てるような高度なメカニズムを必要とする。意識は会社のCEO であり、高いレベルの方向性を決めて、新しい仕事を割り当てる。ゾンビシステムがスムーズに動いてる限り、CEO は眠っていられる。何かがうまくいかなかった時だけ、ベルが鳴ってCEO が起こされる。世の中の出来事があなたの予想を裏切るような状況だ。

 

 自由意志の非存在 

1960年代、ベンジャミン・リベットという科学者が、被験者の頭に電気をつけて非常に簡単な課題をやるように言った。自分が選んだタイミングで指を上げるだけだ。そして高分解能の時計装置を見つめ、指を動かそうという「衝動を感じた」瞬間の針の位置を報告するに言われた。

リベットは、人が実際に動くおよそ1/4秒前に動こうという衝動を知覚することを発見した。しかし驚くのはそこではない。彼は被験者の意識を検討し、もっと驚くべきこと発見した。彼らの脳内活動は動こうという衝動を感じる前に生じ始めるのだ。しかもほんの少しではない。1秒以上前である。

 

 

 

言い換えれば、本人が衝動を意識的に経験するより遥かに前に脳の一部が意思決定をしているのだ。このように、自由意志があるという私達の希望や直感に反して、その存在を納得のいくように確定する論拠は今のところ全くない。

 

脳とは、何と奇怪な傑作なのか。そしてそれを研究する技術と意思を持つ世代にいる私たちは何と幸運なことか。それは私たちが宇宙で発見した中で最も素晴らしいものであり、私たち自身なのである。

 

 Tochiの勝手な感想 

全般的に脳腫瘍や外傷、精神疾患とその人の言動の異常性といったような、かなり古典的な知識と哲学的な問題とを無理やり結びつけて論じるような、やや無理のある内容の本に感じました。

ただ、複雑なものを細かく分解して個々を調べていくという還元主義的な方法論で脳を分解し、神経細胞の働きをいくら詳しく調べたところで脳と心の関係は説明できないという考えに関しては共感できるものでした。これは例えば、飛行機を作る金属の塊ひとつはどれも空を飛ぶという特性を持っていないが、正しくくっつけ合わせると出来上がったものは空中に浮かぶといった様に、どのパーツにも本来備わっていない新しい機能が、パーツを組み合わせることで生み出せる「創発特性」という概念が理由であるとのことでした。

コメント

  1. でいちゃん より:

    なんか難しくて記事の内容が理解できませんでした(泣
    自分が文系だからかな?

    てかTochiさん、京大卒だったんですね
    あったまいー

    • Tochi より:

      >なんか難しくて記事の内容が理解できませんでした(泣
      わかりにくいですよね。何か上手くまとめられませんでした!

      >てかTochiさん、京大卒だったんですね
      残ったのは700マソの奨学金の借金だけでしたとさ・・(泣)