りんりさんや水瀬ケンイチさんがTwitterで紹介していた、インデックス投資アドバイザーのカン・チュンド著「つみたて投資の終わり方 100年生きても大丈夫!: 人生後半に向けた投資信託の取り崩しメソッドを解説!(2022)」を読んでみました。
TochiはもうFIREしてしまっており、著者が読者と想定している「低コストの投資信託で積立投資を実践中で、おおむね10年内にリタイアを迎える人」ではなかったせいか、これといって初めて聞くような内容はありませんでした。ただ、これからリアイアを迎える方や、取り崩しをどうするか考えたことが無い方などであれば参考になる本なのかも知れません。
例によって気になった所を抜粋します。
どうして資産を増やすのを止められないのか?
多くの人がお金を増やすに固執するのは、資産を増やすより、資産を使うほうが難しいためです。その用い方はあなた次第であり、(お金を使うことは)あなたの本性を表す行為でもあります。
・お金の増やし方は普遍的。お金の使い方は個別的
資産をどのように取り崩し、そのお金を何に使うか。この命題を避けるために、人は普遍行為である「お金を増やす」に執着するのです。
誤解を恐れずに言えば、お金を増やすことに長けた人は、それを続けるほうが(お金を使うことより)楽なのです。
人生は有限です。お金は利用してこそ、その価値が最大化するのです。
リタイアにおすすめなバランスファンド
本書では、老後(取崩し期に)おいて国・地域、資産の分散の「自由度」を制約することで投資と距離を置き、取り崩しに専念する事が出来ることから、全世界株式インデックスファンドよりも以下のバランスファンド(債券など異なる資産を組み合わせた投資信託)のいずれかに1本化することをお勧めします。
・eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
・楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)
・楽天・インデックス・バランス・ファンド(株式重視型)
Tochiの勝手な感想
「定額よりも定率で取り崩し、3%と想定する投資リターンを、できれば取り崩し率よりも高くしましょう!」う、うん。。
まぁ、確かにこれまではこの方法で正解だったのかも知れない。
ただ今後は、唯でさえ巨額な社会保障費の更なる増加による「金融所得税の増税」、「年金の目減り」、「医療費負担の増大」、「資産課税」、「インフレ」、「国債や通貨の信用問題」などに向き合っていかなくてはいけない時代がやって来るものと考えられる。
これらを想定すると、3%のリターン想定で国債もタップリ持っていれば”取り敢えずは安心だろう”なんていう甘い想定では、既に後期高齢者ならまだしも、現役世代の場合は幸運でもない限りは継続が厳しいのではないかという様に思える。
例えば、本書で想定しているインフレ率の1%という点に関しては、コロナ以降を見ると実際には2-3%の高い値で推移しており(下図)、少子高齢化の進展による衰退が予想される日本においては、長期的には円安(=輸入物価高騰)や賃金上昇による恒常的なインフレが生じる可能性だって少なくない。
https://jp.investing.com/
もしそうなった場合、3%のリターンを想定するような老後を送っていたら、生活費の分はまるまる持ち出しとなり、そう長くは資産が持たないことになる。
また、国債においても日米共に政府債務が急拡大している現状においては、いつまでも安全資産とは言えないように思える。
そしてもし、現在検討されている金融所得への社会保険料や資産課税が課されるような状況になれば、尚更窮地に追い込まれることだろう。
これらの問題は、ポンジスキーム詐欺と化している社会保障制度の抜本的改革を先送りしてしまっていることが原因であり、この目先の政治的リスクを回避し続けていることで、過去より現在、現在より未来と、老後の経済的リスクが加速度的に増大している事を意味している。このため、過去の甘い想定のまま低リスク投資を続けていると、将来的には生活に必要な収入が得られない時代がやってくるであろうことを相当程度、覚悟しておく必要がある様に思える。
もしそうなった場合、
・生活水準を大幅に落としてでも何とか生き延びるか?
・それとも老後も何らかの労働所得を得られるようにしておくか?
・もしくは時代に見合ったリスク投資を老後も続けるか?
・いよいよ日本がヤバくなった際には海外移住をするか?
くらいの柔軟な発想とリスクテイクが求められる時代が、そう遠くもない未来(具体的には、2042年に高齢者数がピークに達し、2050年には現在よりも20%も可処分所得が減る)にやって来るのではなかろうか!?(*ガクブル無職談)
コメント
いつもブログ拝読しています。
特に税金関連はブックマークして何度も熟読して居ます。
私も無職で「税金が大嫌い」なのですww
>多くの人がお金を増やすに固執するのは、資産を増やすより、
資産を使うほうが難しいためです。
コレ圧倒的同意です。特に私の様に運だけで投資が実を結んだ身分だと
再現性が皆無だし資産を減らして現状の立ち位置に戻って来れるのか
疑わしい。
しかも自分で意図的に減らして元の立ち位置に戻れませんでした…って
「馬鹿ですか?」レベルww
本当に増やすより遣う方が難しいですね。
コレからも面白い記事を楽しみにしています。
黒田さんこんにちは~
>私も無職で「税金が大嫌い」なのですww
わかります(笑)
余りにも使われ方が酷すぎますし、裏金がバレても反省すらしないですし、もはや利権のためだけに税金を使う事を隠そうとすらしなくなるほど腐敗しているのを目の当たりにしていると、びた一文払いたくなくなりますよね!
>本当に増やすより遣う方が難しいですね。
仰るとおりです!
ただ逆に考えれば、使うのが苦手な人の方が種銭を貯めやすく投資が有利になるので、これはある意味(儲かっている投資家の)必然でもあるような気がします。
それに幾ら貯めようが人の欲望(不安も)には際限がありませんしね!
一方で、不安や欲望と言った感情にただ身を任せているだけというのは、合理的な思考が重要であるはずの投資家としては片手落ちなのかも知れませんが、自分はまだそんな事を考えるほど貯めていないので、こんな小難しい事はもっと貯まってからでいっかな・・(笑)
>特に私の様に運だけで投資が実を結んだ
実に羨ましい!オラにも運をっ!
こんにちは!
この本の著者を含めてリタイアと同時に人的資本(労働者債券)を失うからリスク許容度が下がるので大幅にリスクを下げましょうっていう方多いんですけど,自分はそう思わないんですよねぇ。
元々のリスク選好(許容度)って人によるというか,労働収入がある時から保守的な人はリスク下げるし,常に株式100%の人もいて,それがリタイアと同時に変わるのかって疑問です。
よって,私は5年後にリタイア予定ですが,現在のリスク資産割合は変えずに行こうと思います。
>リタイアと同時に人的資本(労働者債券)を失うからリスク許容度が下がるので大幅にリスクを下げましょうっていう方多いんですけど,自分はそう思わないんですよねぇ。
「リスク許容度」ってなんとなく意味はわかりますが、要は気分ですよね。。
個人的な経験からすると、FIRE直後は自販機で130円のジュースを買うのですら、「働いてもいないのにお金を使っていいのかな・・」などと躊躇し、しかも頼みの綱の投資でも損をしていた事もあって精神的に結構きつかったです。ただこれは単純に慣れと、その後は無職なのに資産が増えている事、生活費を把握した事で全く感じなくなりました。リタイアで許容度が急減し、その後上がったということか?
一方で年金がもらえる様な普通の状況であれば、よほど生活費が多い人でもなければリスク許容度が変わるほどのことは無いような気がしますが、どうなんでしょうね。
>現在のリスク資産割合は変えずに行こうと思います。
自分も資産額が一定額以上に増えたらレバETFなどのハイリスク投資を辞めてオルカンなどに移行するつもりですが、リスク割合を変えるつもりは全くありません(既に生活費5年分以上分は現金で所有)。上手く行っていれば下手に変えるよりそのままの方が安心感がありますよね!
貴重なリタイア経験談をありがとうございます。
「資産が減っている時の消費は精神的にきつく,増えている時は平気」ってのは示唆に富みますね。
人間は未知への恐怖が過剰になり過ぎる傾向があるので,生活費を把握して可視化したのは大きかったですね。まぁ,これもリタイア前に想定しても実際にリタイアしてみないと本当の数字は見えてこないような気がしますが。
本当の富豪はともかく,小金持ち程度ではどうやら一生お金の不安とは付き合っていかないといけないようで(泣)
>実際にリタイアしてみないと本当の数字は見えてこない
人によるのかも知れませんが、私を含め多くの場合はリタイア後に特に節約を意識せずとも生活費がかなり減る様です。これは仕事のストレス発散の為に使っていたお金を使わなくなる事が主な要因だと考えられます。
仕事はお金を稼ぐことが大きな目的の一つであるはずなのに、それが原因で結構なお金を使っていたというのは何とも奇妙な話ですよね。
>小金持ち程度ではどうやら一生お金の不安とは付き合っていかないといけない
ですねー(泣)
未来に対する不安は全く尽きませんが、とは言え未来のことはその殆どが起こるかどうかすら全くわからない(むしろ大抵は起こらない)妄想に過ぎないので、未来を思い描いて感じる不安も同様にほとんどが錯覚であるからこそ、現実のお金が多少増えた程度では到底倒し切れないんでしょうね。不安や恐怖の根源であろう”死”はいくらお金を積もうと誰も避けられませんし。
だとすれば、お金は(ある程度以上あれば)もはや多寡自体が問題なのではなく、むしろ不安コントロール(本能・感情との付き合い方 and/or セロトニン放出量)の方の問題なのかも???