暴落を拾って天井で売れれば大儲けできます。でもいつ下がるかいつ上がるかのタイミングなんて全くわかりません。だったら機械的に下げを拾うループイフダンと、何も考えずにとにかく全力で長期投資するのとでは、一体どちらが得なのでしょうか?
S&P500(VOO)の場合
S&P500は過去50年にも渡る利回りが年平均10%を超える優れものです。この暴落を拾う場合、どの様な設定がいいのかを調べるため、過去の下落率を調べてみました。
2011年以降のS&P500(VOO)の下落率
毎年何度か暴落が有るような気がますが、比率で見ると実は大して下落しておりません。コロナ禍の36%の下落が少なくともここ10年では最大だったようです。仮にコロナほど下落(30%)してからしか買わない場合は、10年で30%の上昇分しか取れないことになります。年利だとわずか3%。大暴落時のみ拾うという手法は一見良さそうな気がするものの、長期的に見ると全く割に合わないようです。
ではループイフダン(LID)はどうでしょうか?コロナを除く大きな下落が20%程度なのでこの程度を拾えるように、6%下落する度に資産の1/3づつ買い下がるのはどうでしょうか?
結果は何と平均利回り4.7%!(*配当除く) ・・・かなり低い!
では、10%下落で資産を全力投入では? ・・・8.8%!これでも長期投資より不利です。
長期投資 vs ループイフダンまとめ(S&P500、配当を除く)
何もしないで目を瞑って全力投球が一番良いとは何とも釈然としません。努力って、直感って、、。
この様な結果になる原因は、長期的に上昇するS&P500の様な物に投資をする場合、投資比率を下げてしまう効率の低下が、下落を拾う効率上昇よりも不利に働く為だと考えられます。
だったら、滅茶苦茶変動の大きいETFなら話が変わるのでは・・・?
ブル3倍ETF、SOXL、TQQQの最大下落率
S&P500の最大下落率は年間平均14%ですが、半導体ETFブル3倍(SOXL)、ナスダックハイテクETFブル3倍(TQQQ)はその3倍もあります。
SOXL、TQQQの年間最大暴落率と平均値
これでループイフダンを仕掛けたらひょっとして下落を拾う効果の方が上回るのではないでしょうか?
SOXLループイフダンの期待値
既に現在走らせているSOXLループイフダンの期待値を過去10年の値動きから調べてみました。常に1/3のポジションを持ち、最高値のポジションを基準に-20%ごとの下落で2回まで買い下がる設定です。利確はこの基準で各ポジションから+20%の地点です。
各年の約定回数と利回り
SOX全力投資とSOXLループイフダンの比較(経費・配当を除く)
う、ううん、渋い!しかも25%設定のほうが効率がいい。
わずかにSOXよりもSOXLループイフダンの方が有利な程度でしょうか。いやでもSOXL全力買いが一番じゃね?しかも過去5年で見てみると、年平均でSOXL +102.3%、SOXL LID +32.9%、SOX +38.6%と、SOXにすら負ける場合も有るようです。
SOXを全力で買うのと比べ、上昇はブル3倍を1/3保有なので同程度取れて、さらに下落も拾える分、少なくともSOXよりはかなり上回るのではないかと考えたのですが全くの期待ハズレでした。
この要因はブル3倍の上昇率が長期で見た際には3倍になっていないというレバレッジ型ETF特有の性質によるものだと考えられます。
以上の結果から少なくともS&P500やSOXの場合、最も効率的に運用する方法は下落を狙うのではなく、如何に長期間フルポジで持ち続けられるかにあると言えそうです。
まあそれでも全力買いはどーーーしても気が引けるし、SOXL LIDなら長い目で見ればSOXよりはほんの少しは有利そうだし、これで行こうかなぁ・・?
SOXLループイフダンの利点・欠点
検証結果は驚くほどLIDに不利なものでした。それでもしばらくはこの方法を試してみようと考えています。欠点は有るものの、他にアイデアがないから利点も多いからです。
購入・利確タイミングを図る必要がない
いくら長期投資が有利でも、いつかは利確しないといけません。でも一体いつすればいいのでしょうか?利確してから上昇し続けたらどうするのでしょうか?利確せずに暴落したら耐えられるのでしょうか?
LIDの場合はこのような悩みが一切なく、しかも年単位でもある程度利益が見込めることから、初心者や投資以外収入のないリタイア後でも扱いやすいという点は大きなメリットです。
ボックス相場・下落局面でも利益になる場合がある
ループイフダンは変動で利益を出す手法なので、ボックス相場でも値動きがあれば利益が出ます。また下落局面でも値動き次第では利益が出ます。但し、以前ドル円のボラティリティで計算した限りでは細かい変動を狙うほどトータルで得られる利益が増えるという訳ではなく、むしろ減る傾向がありました。
手間がかかる
ドルの扱いの関係で、SOXLループイフダンは毎回しなければいけない処理があり結構面倒臭いです。海外証券口座でやれば手数料が1$で済むのでいいのですが、この場合は税制の不利益や為替レートの計算など別の面倒が発生します。
税金が・・・
さてはて、一体何の事でしょうか? (@_@)
=21.2.4追記 心残り=
ナスダックハイテクETF(QQQ)であれば安心感が有るので、このブル3倍(TQQQ)が国内証券で買える様になったら8割くらいで握り、15%の下落ごとに1割追加するくらいでやりたいというのが正直なところです。
一方で、この数年かなりの加熱感がある半導体ブル3倍ETF(SOXL)をある程度の下落を織り込んでいるとは言え、更なる上昇に賭けて握り続けるというのは如何なものなのかという気もします(まだ上がるかも知れないけど下落リスクの大きさに対し見合わないのでは)。
そもそも思ったように動いていないブル3倍なんて本当に使うメリットが有るのでしょうか。
ある程度個別株を選べる経験と知識があれば玉石混交のETFよりも有望銘柄の比率を高められることで効率的に運用できるのではないかという気もします。まあ少なくとも素人のTochiは黙ってETFを買う方がいいとは思いますし、仮に個別株を多種類持つ場合は国内口座では余りにも手数料ががかさむので海外口座を使うことが前提となりそうですが。
一方で、ある程度知識や経験を積んだ所で個人に銘柄選定における優位性なんて本当にあるのだろうかという懸念も拭えません。ロビンフッドの台頭で個人の占める割合は近年急上昇しましたが、それでも20%程度に過ぎません。取引相手のほとんどはプロだと言うことです。情報の量も質もスピードも、また資金量や手法に至るまでおよそ考えうることは全てにおいて圧倒的に劣勢な個人が、センスや思い込み(即ち運?)だけでプロに対して勝負を挑もうというのはちょっと現実的に思えません。
多種類・長期であれば直接的な戦いを避け、市場全体の上昇バイアスに乗ることもできそうな気はしますが、それでも持っているのがある程度有望株であることが前提となります。良い株は既に高い、どれが上がるかなんてわからない、そもそも理屈で動いていない。この環境下で個人が有望株を多く掴むのはそれなりに高いハードルである様に思えます。
結局ベストを狙うことなんて元々不可能なので、最初からベターで十分という位の気持ちで接したほうが気が楽だし、案外結果もついて来るのかも知れません。効率を追いすぎると際物ばっかり握りしめそうな気がするので。えっ、もしかしてSOXL!?
米株初心者の悩みは尽きませぬ・・(@_@)
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