最近、テーパリング(緩和縮小)や利上げの話が各国で聞かれるようになってきました。当初消極的だった米国でも遂に折込が開始された模様です。
テーパリング世界選手権は、カナダがスタートダッシュ。2番手にはNZが浮上。優勝候補の一角アメリカは豪州、英国などと共に中団待機。なお、日本はエントリー資格なし。
— 神田卓也 (@KandaTakuya) May 26, 2021
・加中銀、テーパリング&利上げ開始時期見通し前倒し、他中銀に先駆け (4/22)
・英中銀はテーパリングを開始~2023年初頭の利上げに向けて動き出す~ (5/6)
・NZ中銀、政策金利据え置き 2022年の利上げ示唆 (5/26)
・米FRBクラリダ氏、テーパリング開始は今後数回の会合で協議可能も (5/26)
・英中銀ブリハ氏、早期の利上げもあり得る-労働市場の動向が鍵 (5/27)
・米FRBのクオールズ氏、テーパリング議論開始が重要に-今後数カ月の経済次第 (5/27)
直近のテーパリングの事例としては、2018年に米株が暴落したことが思い浮かびます。では、この際の暴落はテーパリング、利上げ、長期金利上昇のどれがきっかけなのでしょうか?
https://diamond.jp/articles/-/184985, https://media.rakuten-sec.net/articles/print/26004
2018年の暴落を振り返る
2018年の2月に米雇用統計の上振れで利上げペースが加速するとの見方が強まり米株が暴落しました(VIXショック)。同10月には米中貿易摩擦の懸念に加え、FRBが利上げ回数が増える可能性について言及したことで米株が暴落しました(世界景気悪化ショック)。
この際のテーパリング(バランスシートの縮小)、利上げ、長期金利上昇の推移を見てみます。
2017年~2019年のS&P500、QQQ、長期金利、バランスシート、政策金利の推移
並べてみるとこの期間は政策金利が着々と上昇し(下段)、バランスシートは2017年の10月から縮小されていますが(中段)、2018年2月と10月の暴落との直接的な関係は見られません。S&P500(ローソク足)とナスダック100(青線、QQQ)の推移も似たような物で、QQQだけが特別に長期金利(オレンジ線)の上昇に弱い傾向がある訳では無いようです。
また、VIXショックとその3ヶ月後の暴落は長期金利の急上昇を伴っています(赤の四角)。最も下落幅の大きかった10月は3%台の長期金利に慣れて来たかのように見えた後に3.23%まで上昇した際に引き起こされております。
この結果から少なくとも2018年の暴落は、
・テーパリングや利上げは直接的なきっかけにはなっていない
・長期金利の急上昇の際に株が調整した(債権に資金が移動)
・長期金利が3%を超えて上昇した際に株が暴落した
という事が見て取れます。
10月は株の暴落の後に債権まで売られている(長期金利が下落)ことから、この際の暴落はFRBの利上げに対する強気姿勢が市場の認識とズレており、経済見通しが悪化したことによるものと考えられます。
コロナバブルの崩壊は?
2018年のFRB議長もパウエルさんなので、同じ轍を踏みたくないとの想いで今回は積極的なインフレ抑制策(テーパリング、利上げ)を採っていないのではないかと想像されます。とは言え、2018年の期待インフレ率は2.1%程度だったのに対し、2020年5月で既に2.5%にも到達しております。失業保険の上乗せで雇用者数が伸び悩んでいるとは言え、このままワクチンの接種が進んで経済の回復が進めばインフレは更に加速する可能性が高いです。
コロナバブルが利下げと量的緩和と現金のばら撒きによって引き起こされた事を踏まえれば、「インフレは一時的なものである」と主張しているパウエルさんが方向転換してテーパリングや利上げを開始した後にバブルが弾けるという過去の過ちをなぞる様な未来になる可能性が最も高いように思えます。
その際には、リスクの高い資産から順番に売られてゆくバブル崩壊の兆候が見られるかも知れません。まずは新興国株、次に米国以外の先進国株、その次に米国の小型株、最後に米国の大型株の順に売られるとか。えっ、仮想通貨?(-_-) ナニソレ知らない・・
https://fred.stlouisfed.org/series/WALCL, https://www.gaitame.com/markets/seisakukinri/, https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/7959
コメント
あなたの言う暴落のあとすぐ回復しているんですが
そういう人に限って買い直すことができなくてまた壊れた機械のように暴落まだ?とか言い出すんでしょ
おっしゃる通り!鋭いですね・・。
ただ今回は緩和の総量が半端じゃないですからその分下落幅も大きくなるのではないかと恐れている次第です。